嫌いなものは嫌いだ

高鳴る心臓と鳴り響くLINE – 嫌いなものは嫌いだ 第2話

ピコピコッ
今日もお馴染みの甲高い通知音がなる。その度に心臓が高鳴る。緑のアイコンに赤く未読のマークがつく。
息を深く吸って、首筋をさすりながら、スマホを取り上げ、通知欄を確認する。
ああ私の番だ。私が言葉を返さないといけない順番がやってきてしまった。

***

私はLINEの返信が嫌いだ。いや、嫌いだというと語弊がある。どうも上手くできないのだ。

1時間に1回は軽快な電子音とともにスマホが鳴る。その度になんだか気が滅入ってくる。あんまり嫌になると通知が来て1週間未読スルー、なんてこともざら。もちろん、人間として重要な案件に関しては既読をつけるのだが、比較的緊急度が低そうなものはついつい開封すらも後回しにしてしまう。

また、厄介なことにTwitter・Instagramは更新できる。できてしまうのだ。
だから送信者としては、「なぜこいつは私の返信を無視して私的な投稿を重ねるのか」と憤慨する。そして、懐が尋常でなく深い人は「もしかして彼女にはこのメッセージが送れていないのではないか、」と心配し、一般的な深さの人は「こいつは一体なんなんだ」と嫌悪感を募らせていくのである。

ええ、各位、大変申し訳ございません。
皆様の送信一覧はおおむね届いております。それをワタクシめが開封するのを怠っているだけなのです。

なぜ他のSNSはできてLINEは送れないのか。
その違いとしては、伝える相手が明確か、明確でないかの違いによる「送る言葉のプレッシャーの差」があるのだと思う。

言葉は、自分の状況を伝えるためのツールであり、伝達のための記号である。
そして、それは時に誰かを救うために作用することもあるが、同時に攻撃してしまうこともある。

Twitter・InstagramなどのSNSは伝える対象が不特定多数であり、言うなれば、通り沿いで大声で誰かに呼びかけているようなものなのだ。通行人はその声に反応してもいいし、スルーしてもいい。
私の主張に声を傾けるか否かは、その通行人(=Twitterで言えばフォロワーやアカウントへのビジター)に委ねられ決定される。

言うなれば、そこでのコミュニケーションは概ね私から集団への一方通行のコミュニケーションであり、よほどのことがないかぎり、その意見に同意・あるいは好意を持った人が集まりやすい。「誰も振り向いてくれないかもしれない、」なんて不安に駆られながら、集団に大声で呼びかける。そして時たま、こちらに振り返ってくれる、手をとってそうだよね、と共感してくれる人がいる。
これはとても私にとって嬉しく、居心地のいい環境なのである。

翻って、LINE。
改めて書くのも滑稽だけれど、LINEとはSNSの1つで、1on1の会話が基本のクローズドなチャット機能がメインのツールである。

すると、相手は特定される。私はxxxさんにメッセージを送る必要がある。
しかし、ただメッセージを送るのではいけない。言葉は凶器だ。時に同じ言葉でもそれを見た時の相手のタイミングや調子などによって受け取り方が変わってしまう。話し言葉では身振り手振りなどの非言語コミュニケーションでその言葉尻を変えたりニュアンスを伝えたりするのは簡単だが、書き言葉になるとそうはいかない。私の言葉でxxxさんが気分を害することは決してあってはならない。それは、xxxさんとの関係をこれからもよしなに続けていきたいというちょっとした私の下心と人としての慮りが働くからだ。

そうすると、私はxxxさんに「xxxさんがいかような状況下においてもあまり攻撃的に受け止められない柔らかな文体で、かつ、xxxさんがまあこいつになら今後も話を振ろうかなと思わせるように」メッセージを送る必要がある。

ここまでくると緑の画面とにらめっこしたまま、私の頭は、んッ、とフリーズしてしまうのである。

一般的なビジネスマナーとして、「24時間以内に相手には返信しなさい。返信は早ければ早いほど良い、」と言われている。そう、何か協力して事をなして行く上で返信が来ないということは、=意思がないということにつながり、仕事の案件を遅延させる原因になったり、最悪の場合は破談になることもある。

それまでに大ごとになるリスクを承知している。そして大体の場合、5分以内に返信が終わることもわかっている。このエッセイを書いている間にも断捨離する事は可能なはず。
それでも画面越しにどうしても相手の顔が浮かんできてしまい、文章が続かないのだ。

それでもいとうに何かを依頼してくださる、遊びに誘ってくれる方達に感謝の念は絶えません。
そろそろ脱却したいと思いつつ、未だ私の未読は48件。
ああ、大変な数字である、あァ、大変な…。

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いとう
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